発注元から伝えられたデザインの構想をもとに、図案師が描いていくため、ことに絵心が必要とされます。
草稿に白生地を重ねゴム糸目を置いていきます。渋紙で作った円錐状の筒の先端に先金を付けゴム糊を入れて、指先で調節しながら置いていきます。
糸目糊は本来、挿し友禅の際に色が混ざらないように防染するのが目的ですが、完成品にはゴム糸目を置いた線が白く残りますので、糸目の太さ、強弱の加減に熟練の技が必要です。
(糊置きの着物は工程取材のきものと異なります。)
挿し友禅の前に地染めを行なう工程では、模様部分に色が入らないように防染する目的で、でんぷん糊で伏せ糊をします。
ゴム糸目糊との間に隙間があれば、地染めの際に模様が汚れてしまいますし、ゴム糸目糊より外側まではみ出してしまうと、細い糸目が太くなってしまうなど、細心の注意が求められます。
伏せた糊が乾ききらないうちに、挽粉(ひきこ)をかけて糊の表面を保護し、他の部分に付着するのを防ぎます。
(伏せ糊の着物は工程取材のきものと異なります。)
伏せ糊をした生地を、伸子(しんし)を打って長く張ります。まず染料を生地に均一に浸透しやすくするとともに、染料が伏せ糊の内側ににじみ出るのを防ぐために、色の濃淡に応じて豆汁かふのり液を全体に引く地入れの作業を行います。
その後刷毛で地色を一気に引き染します。染める面積が広くムラも生じやすいため、均一に手早く染める熟練した技量が不可欠です。淡い色で二度引き以上、濃い色はそれ以上の引き染めをします。
地染めの後染料液の乾いた生地を蒸しにまわします。地染めの段階では染料は生地に置かれている状態ですが蒸す工程を経ることで生地に定着し発色も完全なものとなります。
蒸しと反物を水で洗う水元の工程は関連性が深いのでひとつの作業場が両方の設備を整えています。
(蒸しと水元のきものは、工程取材のきものと異なります。)
糊とともに定着せず余った染料を水で洗い流す作業を水元といいます。
かつては鴨川などで行なわれ、友禅流しの名称で親しまれていましたが、現在では仕事場で「川」とよぶ長い水槽に汲み上げた地下水を流して作業をしています。
はじめに五分ほど水で流して糊をふやかし、刷毛などで落とした後、生地と生地が触れ合うだけで傷ができることもあるので、注意しながら手早く洗います。
京都の地下水は軟水で鉄分も少なく、四季を通じて十七度に保たれているため作業に適しています。
(水元の着物は工程取材のきものと異なります。)
「友禅する」と言われることもある色挿しの工程。ゴム糸目で防染した模様の内側に色を挿していきます。およその色指定はありますが、染料の調合から細部の配色まで、職人に任されますので、高度な色彩感覚と絵画的な技量が必要とされる重要なポジションです。染料液のにじみを抑え、生地に浸透させるため電熱器にかざしながら筆で色を挿します。
色挿し後再び蒸し(友禅の色を生地に定着)、揮発洗い(ゴム糸目を落とす)、水元(すすぎ洗い)を経て、湯のし(アイロン加工)に。染色工程の終了後金箔加工や刺繍を施して完成です。
友禅が仕上がったあと、アクセントとして加えるのが、印金(金箔加工)や刺繍です。
印金の場合、金を入れたい部分に糊を置き、金箔をのせて接着し、余分な箔を掃き落とします。
箔は金のほか銀も使います。銀箔は金に着色されたものがいろいろあり、変化がつけやすいものです。
(箔と刺繍の着物は工程取材のきものと異なります。)
気を張りつめた作業が続く、長い工程を経て完成しました。